原作・平 盛文
オリジナルネット小説
王家の墓標
キャラクター





多祥 小太郎
(たしょう こたろう)
年齢は28歳。背はすらりと高く、細面で、顔立ちも決して悪くはない。いや、どちらかといえば良い方である。
それに、いかに今現在閑職にあるとはいえ、刑事という職業柄、当然体も鍛えている。ルックスからいえばいかにもモテそうだ。
しかしその一見精悍な姿かたちとは裏腹に、現在の彼は   いや、恐らくもともと、そういう癖はあったのであろうが   少々偏屈で、世渡りも人付き合いも決して得意ではない。
それに、その内心はいつも不安定で、ややひがみっぽいところもあるので、何かと他人に誤解を受けやすい。
だがその心の奥底に秘めた正義感と、仕事に対するバイタリティ、そして元来は、捜査能力そのものにも非常に秀でた才能を具備しているので、現在の彼が置かれた情況からは誠に想像し辛いのだが、実はこの男“デカ”こそが天職のような人物なのである。
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江藤 典子
(えとう のりこ)
大きな瞳が特徴の、如何にも今様な感じの知的な美人だ。その体躯も美貌同様スマートで、非常に魅力的な女性である。27歳。
長く伸びた髪を上でまとめ、それが彼女を他人に能動的な印象を与える。服装もどちらかといえば華美なものより機能的なものを好む。
ちなみに、多祥と初めて出会った日には、薄いピンク色を基調としたノースリーブのボタンシャツに、チャコールグレイのパンツ、履物は黒のエナメルパンプス、といういでたちだった。
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愛野 仁
(あいの ひとし)
多祥と同期のエリート捜査官である。多祥とは何もかもが対照的で、世渡りもうまく、官僚組織という一筋縄ではいかない仕組みの中でも生き抜く術というものを心得ている。
見た目は、例えていうならIT系の起業家タイプだ。野心マンマンで、新しいビジネスにも果敢にチャレンジするバイタリティに満ち溢れている・・・「何を考えているかわからない」如何にもお役人というタイプ、というよりは、むしろそういったイメージを人に与える。が、実際には、野心こそIT起業家並みの旺盛さをもつものの、先例を重んじ、何に対しても保守的な、典型的なお役人体質であり、社会において彼が優れた能力を示せるのは、ただ彼が所属する組織内の人間関係において、上手に交遊しそれを利用する方法を体得しているという点のみだ。
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長田 幸一
(ながた こういち)
見た目は“人の良い下町のオヤジ”といった体である。小柄で、人懐っこい顔立ちに、髪も昔かたぎに短く刈りあげているそのうえ腹もだらしなくポッコリと出ているので、一見隙だらけな印象を人に与える。が、そのおっとりとした風貌とは裏腹に、実はかなり“抜け目のない”タイプだ。少なくとも多祥はそう感じている。
実際、その階級は警察機構の中でも上から数えて3番目の“警視長”(役職は現在「警視庁方面本部長」)である。無論それだけでも充分、警察組織の中では順調に出世コースを歩んでいるエリートなのだが、他の仲間達から「警視総監の腰ぎんちゃく」とも揶揄されるほど、抜け目なく上に擦り寄り、その日常の態度から、彼が更なる上昇を志向していることが伺える。
といったところから、多祥も周囲同様、心のうちで、この長田のことを「己の出世のことしか頭にない」人物であると、勝手な評価を下している。

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江藤 寛
(えとう ひろし)
御年71歳の経済学者で現・京葉商科大学学長。その経済理論は、何にも増して自由主義的傾向ガ強い。
いわゆる「白髪の紳士」で、その泰然たる姿からは、知性と教養が文字通りにじみ出ている。
彼にはこんな説話がある。一度に10社からの原稿依頼があった際、彼は十人の担当者を横にずらりと並べ、一枚一枚原稿を書いては、それを次々と担当者に手渡した。そして全担当者に一枚ずつ原稿がいきわたり、次の11枚目の原稿で、彼はなんと、最初の担当者に手渡した原稿の続きを
何のためらいも無く書き始めたという。そして次の12枚目の原稿には、二番目の担当者に手渡した原稿の続きを、さらに13枚目の原稿では、3番目の担当者に手渡した原稿の続きを・・・といった具合に次々と書き上げていったとのことである。
名門・吉鷹(きちよう)大学の教授時代の教え子の一人に、後に国会議員となる四師谷(ししがやつ)恭一氏がいる。

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四師谷 恭一
(ししがやつ きょういち)
与党に所属する衆議院議員にして現・厚生大臣。学生時代より、恩師である経済学者・江藤寛博士に薫陶を受け、その思想は「政治・経済の改革」に染め抜かれている。
とりわけ経済政策に関しては、しばしば厚生大臣という役職から逸脱して、メディアに「より自由で規制の少ない経済の実現」という自説を展開させ、ときにそれが現内閣全体の総意から外れることもあった為に物議をかもすこともあり、仲間内からは「一匹狼」、「変人」とのレッテルを貼られてしまっていた。
だがその硬骨漢な一面と、溢れる改革精神が、熱い国民の支持をもたらし、彼はここ数年、常に「首相になってほしい政治家ナンバー1」の地位を占め続けてもいた。
そのため、本来なら守旧的な与党内では煙たがれる存在なのであったが、世論を意識して、党の幹部たちも、彼を内閣の一員に迎えざるを得ないのであった。
又、四師谷厚生大臣はそのルックスも、従来の日本の政治家達とは一線を画し、スマートで、海外のメディアから某ハリウッド・スターに例えられるほど顔立ちも整っており、その点からも非常に一般受けしやすいタイプといえた。
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飛田 高志
(とびた たかし)
彼は、第二次大戦後に勃興した巨大企業グループ「アルファオアシス」の、実質的な若き総帥であった。アルファオアシス・グループは代々飛田家の人間によって経営権を支配されてきた、いわゆる同族企業である。だがその巨大さゆえに、一族の間では長年深刻な対立が続いていた。しかし高志は、その宿悪を類稀なる人間力によって見事克服し、さらには一気呵成にグループそのものの近代化を具現化させつつあった。が、その過程で、ある日突然、まさに志半ばにして、突如謎の“自殺”を遂げることとなる。享年33歳。
名門の家に生まれ、上品ではあるがややもすれば文弱にも見える、如何にも良家の子弟らしいその風貌からは想像できぬほど、その芯は、ことに当たっては果断を発揮する、実に剛直な人物であった。
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飯田 文彦
(いいだ ふみひこ)
外見は(少々古い表現だが)、まさに「もやしっこ」そのもの。世のおじさんからはただのボサボサ頭にしか見えないこだわりの髪型に、上述の細い体型でのラフな着こなしは、今時どこにでもいる若者にしか見えない。
が、その頭脳はかなりのもので、
私大の名門・吉鷹(きちよう)大学政経学部を主席で卒業後、京葉商科大学大学院金融工学科に入学。現在は江藤博士の下、博士号を目指している。24歳。

世間から間々奇異に映る言動も、彼自身にしてみれば、それなりに正当な論理があるのだが、これがうまく伝わらないため、誤解を受けることが多い。
しかし内面は実に細やかで、それなりに気配りもしているし、本当は協調性も社会性も持ち合わせている「常識人」なのである。
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飛田 万蔵
(とびた まんぞう)
巨大コングロマリット、アルファオアシス・グループの創始者。戦前は大陸に渡り、軍に各種備品を納入する仕事を手始めに、徐々に事業を拡大していった。その後敗戦により彼のビジネスはしばし中座することとなったが、内地に戻ったのち、大陸時代に得た資金を元手に、かつての縁故を頼って、戦後の復興事業に携わることに成功。天性の商才と、人当たりのよさから彼の事業は瞬く間に膨れ上がっていった。
体が小さく、よく動き回ることから、「こまねずみ」というあだ名を周囲から頂戴した。成功後も苦労人らしく、決して驕ることなく、腰の低い気さくな性格は生涯変わることは無かった。
一方、私生活においては、商売を通じて知り合ったある陸軍将校の紹介で、維新で零落した貴族の末裔、霊峰大寺 絵馬子と結婚。子供も授かり、公私ともに充実した生涯を送ることが出来た。
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飛田家系図
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飛田 誠一
(とびた せいいち)
アルファオアシス・グループの始祖・飛田万蔵の長子。アルファオアシス銀行初代頭取にして、同金融グループの総帥。一代で上りつめた、たたき上げの父とは見た目も性格も似ていない。いずれも貴族の末にして美人の誉れ高い母の様子と、傲慢とも言える高過ぎる自尊心を濃く受け継いだ。
そのためか、父・万蔵は、誠一よりも、彼の双子の弟で、堅実で真面目な性格の誠二の方により将来の期待をかけていた。
結果、悪循環となり、誠一は尚一層、父に反発。とりわけ若い頃は遊興にふけり、怠惰な生活を送った。結婚後も多くの愛人をつくり、悩んだ夫人が遂には自殺未遂をするに至ったが、それでも尚、彼は堕落した生活を改めようとはしなかった。そのため父、万蔵は彼を勘当し、一族の経営からも追放しようとしたが、妻・絵馬子の懇願により、辛うじて思いとどまった。以後、誠一は表面的には父に従い、母の援護もあって、やがてグループに新設された銀行の経営を任されることとなった。
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飛田 誠二
(とびた せいじ)
アルファオアシス・グループ創始者・飛田万蔵を父に持つ双子の兄弟の弟。姿かたちは眉目秀麗であった貴族の末、母・絵馬子の血をより受けついていたが、性格面では父親似であった。
商才にも長け、父・万蔵は、早くから、誠二の兄・誠一よりも、この弟の方に期待をしていたようであった。
苦労して代を築いた父親をよく観察していたため、生活も決して豪奢にならず、終生真面目な働き者として過ごした。一方、その立場上、どうしてもいわゆる“仕事人間”にならざるを得なかったが、それでも暇を見つけては子供達の勉強を見るなど、当時の財界人にあっては珍しく家庭的な一面もあった。
又、反目する兄への反発があったのか、生涯にわたって、決して愛人の類を持たなかった、という点もその時勢においては特筆すべき彼の際立った点である。
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飛田 誠高
(とびた なりたか)
第三代アルファオアシス商事社長。その見た目からも如何にも「育ちのよさ」が感じられた人物であった。物腰の柔らかさや、何気ない仕草からかもし出される上品さなどは、一朝一夕で身に付くものではなく、やはりそれはお金持ちの御曹司だからこそなせる業であろう。
そしてこの人物。たしかに“いいとこのボンボン”ではあるが、決してただの世間知らずのお坊ちゃま、というわけではなかった。先見性や、ビジネスに対する冷徹な判断力はずば抜けたものがあり、ある意味、父・誠二、そしてアルファオアシス・グループの創始者である祖父の万蔵をも超える商才の持ち主であった。南飛田家、中興の祖である。
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飛田 義彦
(とびた よしひこ)
北飛田家祖・誠一の長子で、父の跡を継ぎアルファオアシス金融グループ二代目総帥の座に就いた。家庭を顧みなかった父・誠一に反発しながらも結局は抗し切れず、敷かれたレールの上に乗る人生を選択した。
母が自殺未遂を繰り返すなど、不安定な家庭環境で育ったため、性格的には暗く、人一倍猜疑心が強い。ひとことでいえば心底陰気なタイプだ。
また、そうした感情ががストレートに表れたように、頬は痩せ、いつも周囲を威嚇するよう
な、釣り上がった鋭い目つきが特徴的な風貌をしている。
経営手腕もその風貌同様、華やかさとはまったく無縁なものだったが、結論から言えば、そのやり方こそがまったくの“正解”であった(少なくともある時代までは)
しかし彼もまた、バブル期を迎え自らを見失ってしまう。この世の不幸を一身に背負ったような彼の風貌にも、派手な投資や華やかなビジネスプランのお陰で、一時はまるで不似合いな微笑が浮かんでいたが、それも束の間、バブル崩壊とともに、一層の苦悩と不満と不信がその陰鬱な表情をさらに曇らせることとなった。

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村野 尚紀
(むらの なおき)
衆議院議員。現・与党幹事長。74歳。
初当選以来、一貫して与党の主流派に身をおき、今や彼はときの総理をも思いのままに操ることが出来るこの国の実質的な最高権力者となった。
政治信条では“保守主義”を貫き、規制撤廃論者である四師谷とは同じ与党に属しながら、ことごとく対立している
その存在は、ひとことでいえばまさに日本の老政治家の典型だ。一見人がよさそうに見せながら、個人的な不利益を被る可能性をいささかでも感じれば、公の場においても、すぐに傲慢さと卑屈さがないまぜの面相となって、平気で大声を張り上げ相手を罵ることにいささかの躊躇もしない。
そしてその外見も内面同様、周囲を威嚇するように、常に過信と自己嫌悪が理不尽に共存した悪辣な仏頂面を浮かべているため、元来およそ好男子とはいいがたいその相貌が一層醜悪なものとなってしまっていた。
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飛田 絵馬子
(とびた えまこ)
アルファオアシスグループの創始者である飛田万蔵の妻。実家の霊峰大寺(れいほうだいじ)家はもともと貴族であったが、維新の折、運悪く男子の跡取り不在だったため、新政府下、新に発足した華族の選に漏れた。しかし霊峰大寺家側ではこの政府の見解に大いなる疑義を持っていた。彼らは自らが華族に列せられなかったのは、幕末にときの当主が幕府側についていたことに起因していると判断していた。以後彼らは、この不当なる扱いに抗議し、正統なる地位への回帰を明治政府に陰に陽にと働きかけ続けた。が、遂に彼らの念願は叶わなかった。そして、道を閉ざされた彼らはやがて、お家再興のため、やむなく次の新興勢力である“成金”に次第に近付いていった。
絵馬子は美人ぞろいの霊峰大寺家の“姫君”のなかでも、とりわけ美しい女性だった。一見すると彼女は、無垢な少女の愛らしさを永遠に失うことのない清楚で可憐な、如何にも両家の子女といったたたずまいの女性に見えた。しかしときに、およそ深窓の令嬢には似つかわしくないほどの妖艶な匂いをその身から発し、世の男共をを惑わす魔力をも密かに持ち合わせたいた。そしてその美しさを武器に彼女は、軍閥に深く食い込んでいた“新興成金”の飛田万蔵に近付いていった。そして遂には結婚という正統な手続を踏んで、彼女は苦もなく巨万の富をその手にすることができたのであった。

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中島 久雄
(なかじま ひさお)
厚生大臣・四師谷恭一の公設第一秘書。がっしりした体躯に、よく日焼けしたその厳つい面立ちからは、正直、“知的”な印象はまったく受けない。が、人は見かけによらぬとはこと人のためにあるような言葉で、彼は一度あった人物の名前は決して忘れることがない“記憶の天才”であった。
そればかりか、生家が貧しかったがために“学歴”というものを手に出来なかった彼は、中学を出た後上京し、昼間は働きながら夜間は高校に通い、さらに休日には図書館に通い詰め六法全書を読破、やがては独学であらゆる法律に通暁するにまで至った。
そんな中島を、勤め先の親会社である商社の幹部が偶然見出し、難事の交渉ごと等に充てた。そこで遂に彼の隠れていた異能が開花する。硬軟取り混ぜた彼の交渉術は、彼を抜擢した上司を大いに満足させる結果を出し続けた。中島は次々と困難な商談をまとめ上げ、“奉公先”に巨大な利益をもたらせた。
そんな折り、彼は衆議院議員・四師谷(ししがやつ)に出会った。一目で彼の才能を見抜いた四師谷は、自ら口説き、三顧の礼を持って彼を公設秘書として迎い入れた。
ここでも中島は四師谷の期待に沿う活躍を見せる。とりわけ商社時代にありとあらゆる業界の人間との間に築いたいわゆる“幅広い人脈”というやつが、清濁あわせ飲まずには生きてゆくことの出来ない政治の世界においては、大いにものをいったのであった。
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